- 2017/12/31
STEP3:粗利ミックスを考える
さて、第11話では、フェイス設計について、実際にお店でどのような指導をしていくか…という視点で事例ケースを提示しました。今回はその続きとなります。
シーンとしては、トマトの売場の事例で「アイテム別にどのようにフェイス数を配分するか」を、二人の販売員が持ち寄った以下の情報をもとに議論をしています。
■情報
売場:10フェイス
扱いアイテム数先輩社員のAさんは「4:3:3」、後輩のBさんは「6:3:1」という意見でした。それぞれ仕事の進め方、考え方から上記のフェイス構成を考えています。 ここで私(上長役)は以下のような話をしました。
・両者の意見と仕事ぶりから、良い点をフィードバックする→承認する
・判断するには情報が不足していることを伝えどのような情報を活用すべきかを考え、
まずは項目を整理するよう指示。締め切りは1週間後。
・方法論をフィックスする間の対応は2人それぞれの案を、
私(上長役)が入って3者協議をする形式をとることを決定伝達。
さしあたって明日は「5:3:2」で実施することを指示。
※前回第11話はこちらからご確認できます
→3年目から考え始める店つくり今回はこの後、1週間が経過し、それぞれからでてきた意見を集約し、今後の方向性を考えていく打ち合わせをするところから始めます。
私:では打ち合わせを始めようか。1週間の間に多少の意見交換もしたけど、なかなかゆっくり時間が取れなかったから、改めて整理をしていこう。では先にBさんから整理した内容を教えてくれるかな。
B:はい。
私はうまくデータを活用していきたいと考えいくつか考えてみました。ひとつは今年の方針で利益確保というテーマがあがっていますので、単品ごとの粗利率、額を考えてみました。1個●円の売り上げに対し、いくら粗利が立っているかを考慮すべきだと思います。
また在庫データと販売データのギャップを確認し、値下げや廃棄の発生状況を考慮すべきだと思いました。アイテム「い」について、平均日販は確かに30個ありますが、在庫量も多く、売上と在庫ギャップが最も大きい状況となっていました。実際に商品の廃棄も3つのアイテムの中では最も多く感じます。私:なるほど。利益面に着目してデータを検証してみたというところかな。ではAさんはどうかな?
A:はい。
私の場合は前回も気づいてくださっていたようですが、日中のフェイス調整を重んじています。情報という意味で言うと、データではありませんが時間帯別の客層変化に着目しています。天候や気温の変化に応じて、お客様の状況が変化していますので、きめ細かにフェイスの構成を調整しています。午前中の高齢者が多い時間帯は、少量パックであるアイテム「い」のフェイスを大きめに展開しています。また高齢層のお客様は比較的、来店頻度が高く、同じものを繰り返し購入する傾向が高い為、朝の開店時は近しい商品を比較的大きめにフェイス設計をしています。いつもの商品が、いつもの場所にしっかりとあることも重要な要素だからです。
一方でうちの店の場合高齢層は自転車客が多いため、例えば雨が降ったりすると客足が鈍ります。その際は様子を見ながらアイテム「い」のフェイスを縮小し、日中主婦層が最も購入する「あ」のフェイスへ切り替えタイミングを早めていきます。
アイテム「う」については、Aさんが用意してくれたデータも考慮して、どのくらいのフェイスが適正か再考していきたいなと思いました。地域イベントでお弁当需要があるときなど、しばしば通常より伸びることがあるのですが、「常に」という事でもないので、普段は適正フェイスにしたいと思います。
私は経験上、売場での動きを重視していましたが、確かにもう少しデータンも含めて掘り下げる必要があるなと、改めて思いました。私:Bさんはどうでしょう。
B:Aさんの話を聞いてなるほど…と思いました。
普段から、売場で何をしているのだろうと思っていましたが、客層に合わせて微調整をしていたのですね。詳しく聞いたことがなかったのでわかりませんでした。気温や天候…、それと中期的には季節の変化も…、ですかね。
時間帯別の客層を意識してどの商品がどのくらい売れそうかを考えて、売場設計と発注数量のバランスをとりたいと思いました。時間帯別の発想をいれて、Aさんに相談しながら計画の立て方を考えてみようと思います。A:そうしたら、季節ごと、時間帯ごと、天候ごとといったお客様の傾向について教えるから、数値に落として考えてみようか。計算得意そうだもんな。
B:はい。是非お願いします。
私:いいですねぇ。
では二人でもう少し取り組み方について煮詰めてもらおうかな。来週どうなったか、また教えてもらうから、今週は二人で相談しながらフェイスを決めて色々ためして、検証して、どのパターンで計画するのがよさそうかプロセスを考えてみて欲しい。
一応テーマを整理しておくと、検討の軸は2点。
ひとつは、お客様の立ち場に立って、魅力的な商品、欲しい商品が適切に提供されている売場にすることを考えること。これはAさんの得意領域ですね。
もうひとつは、売上の計画と、計画通りに売れたとしたら、粗利がいくらになるか。そのアイテム毎の構成比と、売場のフェイス構成のバランスを確認してみて欲しい。
先ほどの議論の内容からいくと、天候等の情報を取って、客層の変化の仮説をたてる…という流れになるでしょうね。
すると、午前中の高齢者客がメインの時間帯、日中の主婦層が多い時間帯、夕方の共働き層や仕事帰り層といった3パターンくらいに分かれるかな。それぞれどうなるかシミュレーションをしてみてくださいね。こちらはBさんの領域ですね。
途中で何かあったら遠慮なく声をかけてくださいね。では来週また打ち合わせをしましょう。こんな感じでしょうかね。議論はあくまで事例ですので、少々スムーズに行きすぎのストーリーかもしれませんが、経験を積み重ねて習得した情報やスキルと、客観的な数値データ等を組み合わせて、具体的に売場の管理レベルを上げていく事がポイントです。状況に合わせて最適なフェイスで、お客様へご提案する事で、売上、利益の最大化していくアプローチにつながります。
次回はさらに続きとして、数字に落とし込みをしていきますので是非ご覧ください。
- ■STEP3 粗利ミックスを考える 2017/12/24
年末に向け、冬物商戦、年末商戦といったピークを目前に、お店の皆さんは大忙し時期 になって参りました。この波を超えると、徐々にお店も、もっと言えば会社全体も春への準備へと転換していきます。
さて、春といえばやっぱり新入社員の季節ですよね。各職場でフレッシュなメンバーが入り、初期教育が行われていきます。
一方で、先輩社員も襟を正して、基本に立ち返る必要がある時期でもあります。やはり新入社員に模範示すという意味でも、率先垂範が重要です。これが伴わない職場では、新人達に施した基本教育が「先輩たちもやっていない」という理由で、浸透しないという現象が起きやすくなります。
また、最近増えてきているのが若手社員へのフォロー教育です。特に小売業の場合、OJT(現場教育)のウェイトが高く、入社時の初期教育の後は働きながら学ぶスタイルがほとんどで、「入店した店のタイプ」「上長の指導」「教育担当となった先輩の教え方」…など様々な背景に影響を受けて個人差がついていきます。もっと言えば基本動作を習得した後、「仮説→計画立案→実行→検証→改善→新たな仮説」といったマネジメントサイクルをもって取り組むことができるかどうかで、本人の視点や取り組み方が大きく変わってきます。
一方、これは、あるいみ昔から変わりませんが、「最近の若手は・・・・」という声があるのも事実です。環境の変化スピードがどんどん速くなっていることもあり、世代感の生きてきた時代背景のギャップが広がってきた影響もあり、価値観の差が大きくなっていることも原因の一つでしょう。また過去に比べ、売上を伸ばしにくい環境になっている為、成功体験をしにくくなっており、小売業の仕事そのものの楽しさを感じにくくなっていることも一因です。
こういった背景を受け、人口減少時代で確保した貴重な若手の定着、育成を強化したいというニーズから、若手世代の育成を図る教育研修のご相談を受けるケースが増えてきています。