第8話:店舗で行う具体的「商品ロス削減策②」
前回は、商品ロス削減の具体策として、店内での「従業員動線」についてお伝えいたしました。今回は、販売員さんが店内に滞留している時の対策について言及して参ります。
品出し、商品整理、前進、売場演出…店内で行う仕事には、実にたくさんの種類がありますが、その中でも「場所の制約がある」ものと、「ない」ものが存在しています。
場所の制約がある仕事とは、指定された場所でしかできない仕事を示しています。たとえば、レジでの会計業務はレジでしかできません。また商品の前進やフェイスアップもその場所でしかできません。
一方で場所の制約を受けない仕事もあります。伝票のチェックやリストの消込など、バックヤードでもできますが、店頭の人員体制等も考慮し売場で行う作業などが代表例でしょう。
今回はこういった「場所の制約を受けない業務」を店頭で行う際のポジショニングがテーマです。
さて、多くの場合、店内のどの場所に陣取って業務を行うかは、販売員個々の判断で行われているのではないでしょうか。レジを作業台にして実施しているケースも多くありますが、別の場所で拠点を作っているケースもあり状況によって様々です。
一方で、組織的にルール決めをして場所を設定しているケースはあまり見受けられません。
店内滞留時の作業拠点を意識的に設定しておく事で、店内のお客様への目配りがしやすくなり、通常のお客様には接客がしやすくなり、万引き犯へは牽制効果を持ちますので、正に一石二鳥です。
この施策の効果を高める為のポイントは、どの場所に拠点を設定するかだと言うことができます。成功可能性を高める為に、前段として人間の視野について確認しておきましょう。
人間の視野には2つの種類があります。1つは景色として認識している範囲、もう1つは内容をしっかりと認識することができる範囲です。運転免許を取得する際にどの程度の範囲が見えているかを図る視野角などに近い考え方です。
片目で見えている範囲は約200度、両目でしっかりと認識できる範囲は120度前後、色まで認識できる範囲という意味では70度程度と言われています。
つまりお客様の存在をしっかりと感じる事ができるのは120度程度まで、何をしているかまで認識できる範囲は70度前後になります。目線で追える範囲というのは実はかなり狭いのです。
作業拠点の配置を考える際に、視野の確保に気を配る必要がある事が見えてきたでしょうか。つまり360度を見渡すのは難易度が高く、壁を背にするなどして、見なければならない範囲を絞り込むことが効果的だという事です。
作業拠点設置のポイントをまとめると、1つ目は、人間の視野を考慮し、死角を作らない場所を選択する事です。結果的に奥まった場所から売場の中央へ視線をむける事になります。
2つ目のポイントは、商品ロスが多発している商品群を展開しているコーナーに牽制力が働きやすい場所を選択する事です。
3つ目は、売場の柱面による死角を補完し合うようバランスをとる事です。
これらのポイントをバランスよく抑えた場所に作業拠点を配置する事で売場全体に販売員の目配りがなされ、お客様サービスを向上しつつ、牽制効果を高めることができます。
移動する時は前回(第7話)お伝えした動線設定に沿って移動し、店内に滞留するときは目配りができる拠点に陣取ることで、お店の隙が減っていきます。
いかがでしょうか。こういった販売員の動線設定や作業拠点の配置を仕組み化して、業務の中に組み込むことで、外部ロス対策に有効なお客様へのお声かけをしやすくする体制を整備することができます。その結果、接客向上、ストアロイヤリティの向上につながり、正に一石二鳥です。
一方で前回も触れましたが、個々の店舗で状況が異なる為、本部サイドからの一括指示ではプランニングが難しい事が問題です。
その為、いくつかの企業で実施させていただいているのが、店長会議等に平面図を持参していただき、研修形式でプランニングまで実践してしまう方法です。
その場でプランをしてしまうので、店長は店に帰って実行するだけ。グループワークで相互チェックをするため、精度も高まります。
個々の取扱商品や、店舗特性に合わせてカスタマイズして実施しておりますので、ご興味がございましたら、是非お問合せください。
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詳細はお問合せください。
次回も店内での商品ロス削減の具対策についてお伝えして参ります。引き続宜しくお願い致します。
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【 筆者プロフィール 】
株式会社 せんだ兄弟社 代表取締役 専田 政樹 (https://kyodaisha.com)
株式会社 日本保安 店舗支援PJ担当シニアコンサルタント
7&iグループ出身、小売業歴20年の中小企業診断士
店舗運営管理、販売スタッフ教育等を経験後、グループ内事業会社へ転籍し、小売業から製造小売業への転換を目指す新商品開発部門でSV、VMD、マーケティング、プロモーション企画等を担当し、外部専門職のマネジメント業務等に従事。その後、管理部門の責任者を務め、営業利益▲3%から、1年で+0.5%に改善した実績を持つ。
「次代を担う子供たちに【明るい未来】と【豊かな社会】を託す」事を志に独立開業。2017年3月、企業の人に関する支援を行う㈱せんだ兄弟社を設立。組織人事、各種制度構築、業務改善、人材育成などを事業領域として活動中。
→プロフィール詳細
https://www.nihon-hoan.co.jp/column/2017/04/%E2%96%A0%E5%9F%B7%E7%AD%86%
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