第7話:店舗で行う具体的「商品ロス削減策①」
■STEP2:最大の害は商品ロス 2017/06/16
前回は商品ロスが利益面で店舗に及ぼす影響についてお伝えしました。一見して目立ち、影響が大きく見える商品評価損(値下げなど)よりも、むしろ商品ロスの方が、「損害が大きい」事がお分かりいただけたのではないでしょうか。
肝心なのは具体的に、商品ロスをどうやって防ぐか…という事ですが種類別の対応が必要となります。 第5話で商品ロスには大きく分けて「外部ロス」「内部ロス」「管理ミス」の3つの分類がある事を伝えしています。 まずは、万引きを中心とした「外部ロス」対策から参りましょう。
外部ロス対策にもいくつか種類があります。1つは万引き犯を捕捉するというものです。これは弊社が派遣している私服による保安員(万引きGメン)や販売員や警備員が犯行に及んだ人に声かけをしていくタイプです。
時間軸でいうなら事後処理に相当します。外敵が現れたので、撃退するという感じでしょうか。
もう1つは予防体制の構築です。万引き犯が集まらない店に、あるいは万引きをしようという気にさせない店作りです。
火事が発生したので消化するのが前者なら、こちらは火事が発生しないように予防するタイプの対策です。
警視庁による調査でも数値化されていましたが、万引きを防止する為には販売員さんのお声かけが最も効果的と言われています。皆さんも体感的にはYESでしょう。
しかしながら、お店の販売員さんは日々非常に忙しく仕事をしていますので、プラスアルファで万引き予防の為の業務を別途追加するのは難しいという状況も多いのではないでしょうか。
そのため、実際に予防活動を行うためには、日々行っている業務の中に内包していく事が重要となります。特段、商品ロス対策を考えなくても、そもそも行っている業務の中にその要素をミックスしていく事がポイントです。
では具体的な対策例をあげていきましょう。 今回は販売員の店内動線です。
品出しなどのルーティンワークの中で、バックルームから該当の売場への移動が繰り返されます。また、レジへの移動も多発します。 当然ですが多くの場合、最短距離を移動します。
またいくつかの通路の中で、広い等の物理的に移動しやすい経路を選択しているはずです。
すると、多くのメンバーが同じ経路を通ります。もうお分かりでしょう。結果として、店の中で販売員の目が届かない死角が発生しています。特に対策を打ってないお店では必ずと言っていいほどこういった状況です。
ここに具体的な対策を入れ込むだけで状況は大きく変わります。 まずは移動経路を設計します。バックルームからレジまで複数の動線を設定し、店全体を販売員が移動している状況を作ります。Aルート、Bルートと言った具合です。
そして出勤者に日替わりでどのルートを通るかを日々設定していきます。くじ引き的に楽しんでできる仕掛けを加えていくとより効果的です。
このアクションを起こす事で、店全体に不定期の巡回が発生しますので、万引き犯からしてみると、いつ店員が通るかわからない状況となります。
この棚の列は店員が来ないだろうと予測していても、突然「いらっしゃいませ~」という声掛けとともに店員が通過します。
この状況をつくる事で「この店ではやめておこう」と犯行を断念させる効果を生みます。
その際、忘れてはいけないのは「ルックアップ」です。せっかく動線を設定しても、お客様に目配りをしなければ効果は上がりません。 接客推進活動として、顔を上げてお客様を探し、積極的な挨拶運動を合わせておこないましょう。
防犯効果だけでなく、ストアロイヤリティも高まります。
若干遠回りになるかもしれませんが、日によっては最短ルートを通る日もあります。
結果、しっかりと利益をだし、お店を良いスパイラルに導くことで、お客様を増やし、販売員を増員する方がよっぽど楽になります。 不思議なもので、小売業では、売上や利益が伸びる方が仕事の効率は高まり楽になります。
お客様が減り、売上がおちてしまうと、その対策に追われ、むしろ仕事は増え、さらに人が減り、効率が下り、仕事はより大変になっていきます。
まさに「急がばまわれ」という事ですね。
一方で、お店のロケーションは個店毎に異なる為、一律に本部からこういった従業員動線を設定せよ…と指令をだしてもなかなか上手くいかない事が多いようです。
弊社では、こういった企業様向けに、店長会議等で平面図を持参してもらい、考え方を説明した上で個店毎の従業員動線を設定する研修をおこなっています。
セルフワークを行った後、店長さん同士で情報共有をする事で、互いに指摘をしあう事で、よりスキのない動線設定になり、意識も高めることができます。
近年の小売業では、営業時間の延伸によるシフト制の増加などで、方針や手法を決定した後、全体に浸透させる事で苦労するケースが多くなっています。 そのため個店別に立案が必要なアクションの場合、立案まで全体の場で一気にやってしまい、持って帰って実行すれば良い形をつくる事が効果的です。
※教育研修事業のご案内はこちら↓
https://www.nihon-hoan.co.jp/business/saleseducation/#02
詳細はお問合せください。
次回は、販売員が店内に滞留している際に加えるアクションについてお伝えしていきます。
通常業務を行いながら商品ロス対策のアクションを加える事で、お店の利益を高めていきましょう。
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【 筆者プロフィール 】
株式会社 せんだ兄弟社 代表取締役 専田 政樹 (https://kyodaisha.com)
株式会社 日本保安 店舗支援PJ担当シニアコンサルタント
7&iグループ出身、小売業歴20年の中小企業診断士
店舗運営管理、販売スタッフ教育等を経験後、グループ内事業会社へ転籍し、小売業から製造小売業への転換を目指す新商品開発部門でSV、VMD、マーケティング、プロモーション企画等を担当し、外部専門職のマネジメント業務等に従事。その後、管理部門の責任者を務め、営業利益▲3%から、1年で+0.5%に改善した実績を持つ。
「次代を担う子供たちに【明るい未来】と【豊かな社会】を託す」事を志に独立開業。2017年3月、企業の人に関する支援を行う㈱せんだ兄弟社を設立。組織人事、各種制度構築、業務改善、人材育成などを事業領域として活動中。
→プロフィール詳細
https://www.nihon-hoan.co.jp/column/2017/04/%E2%96%A0%E5%9F%B7%E7%AD%86%
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